東京地方裁判所 昭和44年(ワ)8924号 判決
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〔判決理由〕一、原告主張、同二の事実<注―事故の発生・責任原因>は当事者間に争いがなく、<証拠>によると、訴外堀江九州男が本件事故で頸椎捻挫の傷害を負つたことが認められる。
二、そこで次に本件の争点である事故と訴外堀江九州男の死亡との因果関係について判断する。
<証拠>によると、
訟外九州男は受傷後三日目の昭和四二年八月一四日から一六日までの二日間関東中央病院に通院し、八月一八日から二八日まで国立東京第二病院に入院し、退院後一〇月二一日の症状固定時まで三回同病院に通院して頸椎捻挫の治療を受けていること、
同訴外人は同年一一月一三日慢性賢炎で国立大蔵病院に入院したが、症状が段々悪くなり、翌四三年四月九日慢性腎炎から高窒素血症さらに尿毒症を起して死亡したことが認められる。
ところで頸椎捻挫と腎炎・高窒素血症・尿毒症との因果関係について、甲第九号証によればこれを肯定できるようであるが、同文書を作成した証人甲野太郎(仮名)は、同文書中の、交通事故で腎臓に強いショックが加わり、急性増悪の状態となつた旨の記載は相当でないから訂正する旨の証言をしていることに照らし、甲第九号証によつて直ちに右因果関係を是認するのは相当でない。
他に、頸椎捻挫が慢性腎炎の原因となつたことを認めるに足りる証拠はない。
よつて、本件事故と訴外九州男の死亡自体との間に因果関係を認めることはできず、右頸椎捻挫の傷害の程度においてのみこれを肯定しうるにすぎない。
しかしながら、右認定の症病の経過に、<証拠>を綜合すれば、本件事故による右受傷が、同人の慢性腎炎に対して、その程度は定かでないけれども、若干の悪影響を及ぼしたであろうことは推認するに難くないから、右受傷の程度を判断するについては、このことも考慮に入れるべきものである。
三、そこで右受傷に基づく損害について判断すると、訟外九州男の本件傷害による慰藉料は、前記事実関係に照らし四五万円を相当と考える。また、入通院雑費は、前記頸椎捻挫に伴う入通院の状況に鑑み、四五〇〇円以上要したことは、社会通念に照らし明らかであるが、右金額をもつて本件事故と因果関係のある損害と認められる。
(坂井芳雄 浜崎恭生 佐々木一彦)